コラム:不都合な実験データの取り扱い

ポイント!
・特許明細書に記載する発明の効果は絶対的な効果ではなく、相対的な効果であることがポイント。

 研究開発者が陥りやすい実験データの取り扱いに関する間違い 

【ポイント】
・実際に実験はしていないが、予測可能な実験結果を特許明細書中に記載することは全く問題がない。
・実験結果を捏造することには問題があるが、実験結果の評価を作為的に変更することは全く問題がない。

 実験結果の評価を作為的に変更するとは? 

【例】
顧客から「200℃の耐熱性を有するフィルム」を求められている。
研究開発者はAとBとCから構成されるフィルムを実験し、その耐熱性は150℃であった。
→研究開発者はこのフィルムは失敗作であると考えた。

【NGの例(実験結果の捏造)】
AとBとCから構成されるフィルムの耐熱性を250℃と実施例に記載した。
→捏造なのでNG

【OKの例(評価の変更)】
AとBとCから構成されるフィルムの耐熱性を150℃、評価結果を○と実施例に記載した。
→評価の○、×のボーダーラインを例えば100℃に設定すれば150℃の評価は○となる。捏造でもない。
→現在の自分の業務目標(例の場合、200℃以上の耐熱性)を基準に評価を記載する必要は全く無い。

【ポイント】
自分の望む明細書のストーリーと合致するように評価基準を設定する。
→捏造では無いので全く問題無い。

 不都合な実験結果の取り扱い 

【例】
顧客から「200℃の耐熱性を有するフィルム」を求められている。
研究開発者は以下の①〜③の実験結果を得た。

フィルムの構成耐熱性
AとBとCから構成されるフィルム230℃
AとBとDから構成されるフィルム220℃
AとBとEから構成されるフィルム170℃

①と②は合格品であったが、③は失敗作であった。
しかし、クレームは③も含めるように以下のように記載した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
AとBを含有するフィルム。

【OKの例】
【発明の効果】の記載を、「耐熱性の高いフィルムを提供する」と記載する。
→耐熱性が「高い」「低い」は相対的な記載。
→③を「耐熱性が高いフィルム」と評価しても捏造では無いので、OK
→③を実験データから削除してもOK(不要な実験データの削除は当然OK)

【NGの例】
【発明の効果】の記載を、「200℃以上の耐熱性の高いフィルムを提供する」と記載する。
→③は200℃以上の耐熱性をクリアしていない。
→【特許請求の範囲】の中に【発明の効果】をクリアしていない発明が含まれるのでNG

【OKだが好ましくない例】
【発明の効果】の記載を、「200℃以上の耐熱性の高いフィルムを提供する」と記載して、③を実験データから削除する
→不都合な実験データの削除は捏造ではないので、OK
→但し、「AとBを含有しても耐熱性が200℃以上にならない場合がある」と指摘される可能性があるので、好ましくはない。
→【OKの例】のように「耐熱性の高いフィルム」と記載するだけでこの懸念は解消できるので、避けるべき。

【ポイント】
発明の効果は絶対的な数値で記載するのではなく、相対的な記載にすべき。

発明の効果の良い記載例:
・耐熱性の「高い」フィルムを提供する。
・燃費が「良い」車を提供する。

発明の効果の悪い記載例:
・耐熱性が「200℃以上」のフィルムを提供する。
・燃費が「50km/リットル以上」の車を提供する。

 予測可能な実験データの追加とは? 

【例】
・Aの質量割合が30%のフィルムは耐熱性が250℃であった。
・Aの質量割合が70%のフィルムは耐熱性が200℃であった。

【予測可能な実験データの追加の例】
実験はしていないが、「Aの質量割合が50%のフィルムは耐熱性が220℃」との実験データを追加した。
→厳密には耐熱性は220℃にならないかもしれないが、その付近の値になることが予測可能であるので、OK

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